| 第３８話 合流 打倒シーディスへ | |
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| 第３９話 象と蟻 | |
| 第４０話 （次回更新予定） | |
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第３９話ギンがゴードとの戦いに向かっていった直後、アルトネールは自分の数百倍の大きさを持つ竜《ドラゴン》の亜人シーディスと向き合っていた。 頬を汗が伝う。これほどの巨人と戦うどころか、見上げることすらこれまで経験がない。 しかし、その瞳は緊張と共に決意にも満ちている。 シーディスは悠然とアルトネールを見下ろす。 まるで象と蟻《アリ》の戦いだ。 アルトネールは生唾を飲み込む。 「ハァ……ハァ……フッ！」 右手に短剣《ショート・ソード》を、左手に魔術師の杖を持ち、彼女は戦いを挑んだ。 「エア・グラウンド・フィールド！」 アルトネールは杖の先端に魔術を込める。そして、その杖を地面に突き刺した。 すると杖を中心に白い魔法陣が出現し、彼女の体と共に、中空に浮かび上がる。魔法陣そのものが１つの地面と化しているのだ。 『オマエハコロスナトイワレテイル。ダガ、スコシイタイメニハアッテモラウ』 「甘く見られたものですね……」 アルトネールを乗せた魔法陣はシーディスの頭と同じくらいの位置まで到達する。 ここまで到達すると、シーディスの大きさがよくわかる。野放しにするわけには行かない。 アルトネールは短剣《ショート・ソード》を構えた。 魔法陣は杖に込められた魔力の量によってその持続時間が変化する。 彼女はこの空に浮かぶフィールドのために、己の魔力を半分ほど消費した。もって１０分。その間、彼女は杖を使った魔術を発動することはできない。 しかし、それ以外の魔術なら使うことができる。 「参ります……」 静かに、そう言い切り。次の瞬間、魔術を発動した。 「レイ・セイバー！」 刃に魔力を込め、それを縦に振り降ろす。 次の瞬間白い三日月状の光が放たれた。 三日月状の光は真っ直ぐにシーディスの肩を斬り裂いた。 『ウグッ……!?』 肩から血が吹き出る。蟻《アリ》の様に小さな人間に何ができるとタカをくくっていた。傷つけることすらできまいと思っていた。 しかし、シーディスはその痛みで、瞬時に考えを切り替えた。眼前の女もまた倒すべき敵であると。 『オノレ、ニンゲン！』 「！」 シーディスは拳を、彼女が乗った魔法陣目掛けて放つ。 拳は直撃し、グラグラと魔法陣を揺さぶる。 「う……！」 しかし、それで怯むわけにもいかない。倒すべき敵はこの程度では倒れない。 目線をあげ、シーディスを睨む。シーディスもまたアルトネールから目線をそらすことはない。 直後、シーディスの口内から光がほとばしった。 それがレーザーブレスであると判断するのに、数瞬とかからなかった。 アルトネールは瞬時に、自分の体重を支えている魔法陣を消滅させた。 重力に従いアルトネールと、魔法陣を発生させていた杖は落下していく。直後にシーディスのレーザーブレスが、アルトネールの頭上を通過した。 「エア・グラウンド・フィールド！」 そして、再び魔法陣を出現させる。そこに着地し、中央の魔術師の杖の元まで移動する。 アルトネールは魔術師の杖を掴む。 その直後、彼女が立っている魔法陣は、人１人分が立つ程度のスペースにまで縮小する。その状態で、さらに魔術を発動させた。 「ライトニング・ロード！」 アルトネールが立っている円形魔法陣から、光の橋が発生する。橋は現在アルトネールが見渡した中でもっとも大きな建物の屋上へ伸びる。 即座に魔術師の杖を手に持ち、光の橋を走り、その建物の屋上に降り立つ。 アルトネールはすぐさまシーディスへ視線を走らせる。屋上と言ってもシーディスの目線よりはるかに下だ。 現在アルトネールが考えている戦術は２つ。 １つはシーディスと同じ目線まで上って戦うこと。 これは今やった戦い方だ。メリットは直接的に頭をねらうことができること。しかし、敵にも自分の姿がはっきり見える上に、その状態を維持しながら戦うアルトネールには、魔力の消耗、移動範囲の制限などから、返って不利になる。 さらにシーディス側にも自分の姿がはっきり見える。一瞬で蹴りがつけられればと考えたが、そう上手くはいきそうもない。 もう一つは、シーディスの視線から逃れながら戦うことだ。 やるとしたら建物の陰に隠れながらの攻撃になるだろう。しかし、そうなると有効なダメージを与えるのは難しくなる。 ーーどう戦えば……。 アルトネールがいかに魔術師として優れていても、１人でこれだけの巨人を沈めるのは難しい。 アルトネールは魔術師の杖を見つめる。 ーー大技を叩き込むしかありませんか……。 シーディスの瞳はまだアルトネールを睨みつけている。 『ゴオオオウ！』 シーディスは咆哮し、再び口内からレーザーブレスを放った。 アルトネールはそれを防ぐべく、魔術を発動する。 「バブル・デヴァリアス！」 アルトネールの体を、泡のような結界が包み込む。 術者の周囲を包み込んで守る結界魔術だ。 彼女の体はシーディスの放った巨大なレーザーブレスに一瞬で包まれた。 「くっ……熱い……！」 彼女の足下が崩れる。レーザーブレスで建物が崩れたのだ。 すぐさま魔術を発動。円形魔法陣を出現させ、それを駆使して地面に降り立つ。 ―−やはり、建物に隠れながら戦うしかありませんね……。 アルテノスの町中から隙をついてシーディスに攻撃を加えていく。アルトネールはこの方法で戦う以外にシーディスと対等に戦う方法はないと結論した。 最大の問題は彼女の魔力と、シーディス。どちらが根を上げるかだ。 「あなた達の好きにはさせない！」 その言葉は、シーディスと戦う決意を新たにすると同時に、己への渇でもある。 アルトネールはシーディスへ向けて再び歩み始めた。 「で、これからどうする？」 倒すべき敵はシーディス、ゴード、レジーの３人。 零児は、現在どのようにパーティーを分けて行動するべきかを、ギンとバゼルに視線を合わせたまま問うた。 問われ、バゼルはギンに視線を向ける。 「ギン、お前が戦った男は、とてつもなく硬い存在だったそうだな？」 「ああ、本物の岩みたいに硬かった。打撃系の技は通用しないと見た方がいい」 「ちょっと待って」 パーティ編成に異を唱えるべく、アーネスカも口を開く。 「あのデカイ竜《ドラゴン》を倒すにしろ、その岩みたいな亜人と戦うにしても、飛び道具を持ってる者の方が戦いやすいと思う。ネルやギンみたいな戦闘スタイルじゃ、どちらにしろ戦いずらいんじゃないかと思う」 アーネスカの言っていることはもっともだ。 シーディスに接近線を挑むのは自殺行為だし、ゴードだって、まともに打撃系統の攻撃が通用するタイプではない。 「だが、あの巨体に挑むパーティは、どのみち飛び道具を持つ者の方がいい。ギンが戦った亜人が、いかに打撃が通用しにくい相手だと言っても、まったく通用しない相手とは言えないはずだ」 「まあ、確かに……」 そこで零児が口を挟む 「この中で飛び道具が使えるのは、俺、アーネスカ、アマロさん、シャロンだな」 「ねぇ、クロガネ君」 「なんだ？」 零児はネルに視線を向ける。 それ以外は、基本的に打撃を基本としてるね……私達が全力で立ち向かえば、倒せたりしないかな？ その亜人」 「１対１でなければ結果は変わるかもな。なら、さっきの飛び道具組と、打撃組にパーティを分けて、各々撃破するってのが一番無難かもしれないな」 「そうだな……」 バゼルも零児の言葉に納得した様子を見せる。 「じゃあ、決まりね」 そしてアマロリットがまとめる。。 「あたしとアーネスカ、零児とシャロンの４人で、あの巨大な竜《ドラゴン》を。ネル、ギン、バゼルの３人が岩みたいな亜人を倒す、ってことでいいかしら？」 アマロリットは少し離れて全員にそう述べる。 異論は、誰からも出なかった。 「じゃあ、決まりね……ところでギン」 「なんだ？」 「アルト姉さんはどうしたの？ 一緒じゃなかったの？」 「アルトネールは……」 ギンはシーディスを見上げる。 「今奴とやり合ってる……」 |
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